佐藤精機株式会社 佐藤 慎介社長に聞く 

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企業ブランディングとキャリア採用に注力

 

佐藤精機株式会社 佐藤慎介社長(一番右)

 

――会社の概要と採用状況について教えてください。

 

佐藤社長

創業は1955年10月。産業機器・部品の製作・組み立て、工作機械による切削加工などを行っています。従業員数は42名。高卒採用は5年前に再開し、それからは毎年採用を行っています。2023年は高卒3名を採用しました。普通科高校も含め、近隣の公立高校5校に絞って求人募集を行っていますが、残念ながら2024年春の高卒採用は見送りました。面談を行いましたが、合格に至りませんでした。また大学生の新卒については、わが社が期待する水準の学生に関しては確保が難しい状況にあります。

――そういった中、キャリア採用を実施しました。

 

佐藤社長

大手電機メーカーやベンチャー企業に勤めた経験を持つ息子が2023年6月にこの会社に戻ってきました。そして彼の関係で経験豊富な優秀な人材をキャリア採用しました。雇用条件でも合意し、入社に至っています。また、この人とは別の形でもう1人華やかなキャリアを持つ人についても 採用を検討しましたが、給与や待遇面で当社の想定とは開きがあり、採用には至りませんでした。いくら優秀と感じる人であっても、当社が行っている最先端なものづくりに適応するまでには時間がかかります。教育や訓練に要する費用や時間のことを考えての判断でした。一方、息子からベンチャー企業のやり方を聞いてみて、「会社自体に“魅力”をつけることができれば、都心部からでもキャリア人材を採用できるのではないか」と確信するようになりました。よって今後は、会社の魅力づくりとキャリア採用を積極的に行いたいと考えています。数年前にあるベンチャー企業に商談で訪問したのですが、山奥の利便的とは言えない立地でしたが、雇用条件や職場環境だけで仕事をしているのではなく、本当に自分がやりたい仕事に取り組んでいる優秀なキャリア人材の姿を見て、「当社にもその可能性はある」と思っています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトで、大気遮断型試料輸送容器を納めたわけですが、このような受注案件や取引先の拡大など新卒の大学生やキャリア人材が振り向いてくれるような実績を積み上げて、魅力のある会社にしていきたいと考えます。

―― 人材育成や外国人材の活用は?

 

佐藤社長

工作機械や測定機器など精力的に設備投資を行っていますが、現在は工程ごとに人を配置している状況です。ただ最近は、多能工化に向けた動きもしておりますが、専門性を発揮したいという社員もいるので、そこはバランスを見ながら取り組んでいます。教育は先輩によるOJT方式で行っていますが、「社員に“財産”を持たせよう!」という経営方針から資格取得を推奨しています。例えば、QC検定3級の取得は必須です。会社の規模からみて、QC検定2級や技能検定1級を持つ社員の数が多く、技能検定特級の資格を持つ社員も数名います。また外国人材の活用ですが、現在、ベトナム人の社員が3人います。そのうち1人はハノイ工科大学出身で、7年前に入社。大手自動車メーカーでの勤務経験を持っています。給料や待遇は日本人社員と同等で、旋削工程のリーダーも担当してもらっています。その彼は、直近弊社が取り組んできた民間宇宙ロケットの燃焼器部品の開発と製造にも関わっており、彼の高度な加工技術や知見が生かされています。

―― 今後の会社の魅力づくりと人材確保は?

 

佐藤社長

これからは下請け企業であっても“ブランディング“の時代です。JAXAの仕事をやり遂げたことは会社の評価につながりました。また「金属加工だけを知っていてはダメ!」と人間形成や地域の社会貢献の観点から社員に農業体験をさせています。少子高齢化や人材の流動化が進む中で、何らかの理由でUターン就職を希望する人、ワンパターンの仕事に飽きて転職する人など様々な人がいます。人材確保のチャンスかもしれません。弊社は田舎にありますが、幸いにして交通が全く不便なところに立地しているわけではありませんので、「こんな所にこんなおもしろい会社がある!」と思ってもらうためにもブランディング化が必要だと思っています。現在、工場の拡張も考えていますが、建物はアート的なものにしたい。また、「考えが甘っちょろい!」と言われるかもしれませんが、ダイバーシティの観点から国籍が異なる多様な人材を採用して、特殊でやりがいのある仕事に取り組んでみたいと思っています。そして最後に、私が“社長”でいる間は、何かしらに“尖ったカッコよさ”を追求している人を求めています。

 

【取材・文/写真、饒波(のなみ)正紀】

 

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