
次世代技術者育成の新拠点誕生
大阪公立大高専は、1963年(昭38)の創立以来、寝屋川市を本拠に60年以上にわたって「実践的技術者」を輩出してきた。長年培ってきた信頼は、産業界から高く評価されており、2024年度の有効求人倍率は38倍を超える極めて高い水準にある。
大阪公立大中百舌鳥キャンパスへの全面移転は、教育・研究機能のさらなる高度化を目指したもので、新校舎は同大工学部や大学院工学研究科に隣接して立地する。工学系をはじめ、現代システム科学域の知識情報システム学類や、AI・ロボット技術を活用した農学系のスマートアグリ分野など、大学の幅広い学問分野と連携できる環境が実現する。大学の研究設備や実験施設を高専生が共同利用できる体制も整備され、高専と大学・大学院、企業を結び付ける技術連携拠点としての機能強化を図っていく。

大阪公立大高専では22年度にカリキュラム刷新に着手し、「エネルギー機械」「プロダクトデザイン」「エレクトロニクス」「知能情報」の4コース制を導入した。これにより現在、製造業のデジタル変革(DX)やIoT(モノのインターネット)といった産業界のニーズ、時代の変化に柔軟に対応していくための教育を展開している。これまで地域の中小企業とは共同研究や技術相談を通じて積極的に関わり、協力関係を築いてきた。
今回の移転によって、大学教員との共同研究やスタートアップ支援、インターンシップ(就業体験)などの機会が増え、企業とのつながりも深まり、連携の幅が大きく広がっていきそうだ。今後は、大阪公立大との連携強化による強みを生かし、大阪および関西圏のものづくりを支える次世代技術者育成の拠点として存在感を高める。同大との協働体制のもと、実践力と創造力を兼ね備えたエンジニアを力強く世に送り出していく。
メッセージ
FOCUS in 大阪公立大高専
交流・連携 熱望する声も
大阪公立大には人力飛行機の滞空距離・時間を競う「鳥人間コンテスト」にチャレンジするクラブ活動や、超小型人工衛星の開発に取り組む学生団体などがあり、高専生からも参加を熱望する声があがっている。ものづくりの楽しさに触れられるこのような分野は、早い段階で交流・連携が深まりそうだ。
施設面でも整備が進んでいる。クラブ部室の新設のほか、「高専ロボコン」全国大会で23、24年度に優勝し、2連覇を果たした「ろぼっと倶楽部」の施設の再整備も検討されている。図書館は大学と高専で併設しながら、大学の図書館を高専生も利用できるようにする。グラウンドや食堂、大学生協、最大収容1176席の大ホールなどの施設も共用する予定だ。
ダイバーシティ・女性エンジニア育成や多様性についての取り組み
ダイバーシティは「多様性」を意味する。工学分野では未だ女性の割合が低く、女子学生が学びやすい環境整備が求められている。大阪公立大高専では27年度入学の学校長推薦選抜に「女性エンジニア養成枠」を新設する。同枠では出願に必要な評定(内申点)を一部見直し、意欲・関心度をはかるため面接の配点比重を高めた。あわせて学校長推薦選抜の募集人数も増やした。
クラブ活動や「高専ロボコン」、「全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(DCON)」といった各種コンテスト、学生自治会では既に多くの女子学生が活躍している。特に13年度から活動する女子学生有志団体「ROSE」は、学生が主体となって地域貢献やキャリア学習などに取り組んでいる。25年度には大阪・関西万博のパビリオンでのイベントに参加し、日本高専学会では活動奨励賞を受賞した。

また、多様性への取り組みの一つとして、同校では、障がいのある学生が修学上の不利益を被ることのないよう、本人との対話を重ねながら必要な調整を行う「合理的配慮」の体制を整備しており、安心して学べる学習環境を提供している。
産学官の連携事例について

“共育連携”でエコシステム構築
「共育連携」とは、産学官が共に協力し合い授業や課外活動を通じて学生を育てる取り組みで、地域連携テクノセンターがその窓口となっている。共育連携の事例としては、大阪公立大高専を支援する企業で構成する産学連携推進会との活動がある。2年生を対象にした企業見学会や、3年生向けの企業経営者による特別講義、4年生に対してはインターンシップガイダンスを実施するなど、学内だけでは得られない実践的な学びの場を提供している。
大阪公立大を含めた連携事例では、スタートアップマインドを育てる社会課題解決型の授業を、高専3・4年生に開設している。このほか、ソフトウェア協会(SAJ)との連携もある。24年9月には「会員企業との就職、起業に資する人材の育成を含むビジネスアライアンス環境を学生に提供」する目的でSAJと連携協定を締結。その取り組みの一環として、25年9月にはSAJ会員のソフトやサービスを活用し社会課題解決のアイデアを募る「大公大高専生×企業 共創アイデアソン」を開催した。
社会や現場の課題を技術の組み合せで解決する“イノベーション創出”を学生が経験できるよう、高専独自のエコシステムを構築することが今後の課題となる。
ろぼっと倶楽部
万博でショー 教育成果発信
大阪公立大高専「ろぼっと倶楽部」は25年8月、大阪・関西万博の「OMU EXPO2025」で大型ロボット「コウダイオー」を使ったショーを開いた。学生が設計・製作した高さ2メートル級のパフォーマンスロボットで、腕部が操縦者の動きに連動するリンク機構やVRゴーグルを通じた操縦席の仮想体験など、様々な先端技術が取り入れられている。
ショー当日は猛暑の影響で予定していた動きの一部は行えなかったものの、ロケットパンチのデモは無事成功した。高専と大学が同一のステージで実践的な教育成果を発信したことで、多くの関心を集めた。11月の高専祭では子どもから大人まで多くの参加者がロボットの操作を体験した。


