近年、産業界からは高専生の採用意欲が活発化しています。
学校側から見た優良企業とはどんな企業なのか?!
大阪公立大学工業高等専門学校、杉浦専攻科長にお答えいただきました。
高専生の皆様も、採用企業の皆様も是非ご参考ください。

 

Q1 工業高等専門学校はどんな組織ですか?

工業高等専門学校(高専)は、中学校卒業後に入学し、5年間一貫で高度な工学教育を行う高等教育機関です。

高等学校と異なり、早期から専門科目と実験・実習を重視した教育課程を編成し、大学と比べても実践的・応用的な技術教育に重点を置く点に特徴があります。

一般科目と専門科目を段階的かつ有機的に配置し、理論と実技を結び付けた学修を行うことで、産業現場で即戦力となる技術者の育成を目的としています。

また、少人数教育や教員によるきめ細かな指導、卒業研究や企業インターンシップなどを通じて、課題発見力やチームでの問題解決能力を養成する点も他の教育機関には見られない特色と言えます。

修了後は就職に加え、大学編入や専攻科進学など多様な進路が開かれており、産業界と高等教育を結ぶ実践的技術者養成機関として重要な役割を担っている教育機関です。

 

Q2 卒業後のキャリアについて教えてください

高専は、実験実習等を通して、基礎力と実践力を重点的に教育する点が特徴です。

大阪公立大学工業高等専門学校の進路選択では、およそ60%の卒業生が就職を選択しており、これは高専では標準的な水準ですが、就職先の勤務地については40%程度が大阪府内と他高専と比べても地元志向が強く、業種に関しても製造業が大半を占めるなど、ものづくりの街大阪を受け皿とし、高専での学びで培われた実践的な技術力を背景としたキャリア形成が見て取れます。

高専の卒業生は、大学生と比較すると理論的な力が不足しているように思われていますが、就職後は、自らの努力でそれを補っている卒業生が多いように感じます。

そのため、長年、同一企業で務め、技術部長クラスの役職を担っている卒業生(昭和期から平成初期)も多いようです。

また、昨今では、終身雇用から、ジョブチェンジに社会が変容していることから、高専から就職した企業で身につけた実績と他分野に応用できる実践力がDX応用力と評価され、職種を変えて、より有利な雇用条件先に転職する卒業生(平成期の卒業生)なども増えてきている傾向があります。

 

Q3 教職、学校運営側の立場から優良中小企業とは、どんな企業?

昨今は、高専の認知度が上がり始めて、これまでに採用実績の無かった企業からの求人数が増え始めています。

高専生を多く採用している企業は彼らを育てるノウハウを知っているので問題ないですが、一度も高専生を採用したことのない企業は、高専生の優秀さだけを信じて採用し、過剰な要求をして早い段階で追い込んでしまうことが問題です。

これは、企業規模の大きさとは無関係に、高専生を熟知しているか否かが全てかと思われます。

高専生は中学校を卒業してから受験戦争を知らずに5年間を過ごしています。

大学工学部の高等な知識は習得していますが、全ての高専生がアルバイトを通して社会性を身に付けているとは言えません。

その為、就職してからはしっかりと育てる意識がないと彼らの能力を100%引き出すことは難しいと感じます。

企業を見るポイントとして、多くの企業はOJTを取り入れがちですが、職務内容を教えることをしないまま、いきなり仕事をさせているだけになっていないか、メンター制度の導入企業も形式だけの制度になっていないか見極めることが重要です。

また、採用までは人事が親身になって相談に乗ってくれますが、全体研修終了後に各部署へ配属してからは、大手企業は配属現場には採用に関わった人事担当との接点が減ってしまい、相談する相手がいなくなるという状況が見られます。

ですので、優良企業とはどんな企業かという答えとしては、「新人研修がきちんと制度化されている大手企業」や「人材不足の中でも即戦力にこだわらず育成を重要視している中小企業」と言えるのではないでしょうか。

中小企業の社員数は100名程度ですので、採用の時から社長や管理職が関わってくることが多いと思います。

現場に配属になっても本人を見る機会が多いので、声掛けなどから本人の状況を判断してくれる企業が良いと思います。

上述したように高専生を理解できていなければ追い詰めるだけになってしまいますので、概ね1~2年をかけてゆっくりと育てることができれば、それ以降は皆さんが期待している高専生としての強みを発揮してくれると考えています。

卒業してからも社員研修講師や相談役などを通して我々と連携することで、彼らとのヒアリングの機会を持つことも可能ですし、就職前から皆さんが学校教育の場に教育や共同研究を通して学生と関わることで企業風土や社内雰囲気などを知ってもらう機会を持つことも大切かと思います。

高専生を立派な技術者に育てるために協力していきましょう!

 

米倉 聡明 氏

大阪公立大学工業高等専門学校
専攻科長 杉浦 公彦 様