錦城護謨株式会社 太田 泰造社長に聞く

 

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インナーブランディングで定着化を図る

 

錦城護謨株式会社 太田 泰造社長

 

――会社の概要と採用状況について教えてください。

 

太田社長

創業は1936年。工業用ゴム・樹脂製品の製造販売、自社ブランドでの土木資材・製品の製造販売、軟弱地盤改良の設計・施工・管理、福祉関連製品の製造・販売・施工などを行っています。採用の方は、わが社に来てもらいたいという学生の確保に苦労しており、採用活動に一生懸命取り組ませて頂いたおかげで、24年春の入社は理工系の大卒4名、高卒2名になりそうです。

――採用が順調な理由は?

 

太田社長

父の会社に入社したのが2001年。それからは採用活動にも積極的に関わり、ノウハウも蓄積してきました。理工系学生を確保できたのは、インターンシップの内容を充実させたのが大きな要因です。「営業職」、「技術職」、「システムエンジニア職」などに細分化して独自のメニューを組み込みました。メニューは仕事や技術の見せ方に加えて、伝え方についても工夫しました。自分たちの持っている技術や製品を再確認した上で、戦略的に構築しました。高卒採用については、「普通科高校も対象に広げて求人票を出すものの、昨年は高校生の応募がゼロだったので、今回は内定高校出身の先輩社員に協力を頂きました。

――社員の定着化で取り組んでいることは?

 

太田社長

企業理念やブランド価値を社員に伝えて浸透させる活動、いわゆるインナーブランディングに取り組んでいます。私も日頃考えていることについて、社員に毎週メッセージを送っていますが、特徴的な活動の一つが「FactorISM(ファクトリズム)」(https://factorism.jp/)です。実行委員長として、町工場でものづくりの現場を体験・体感してもらうイベントを大阪府内で実施しています。また、シリコーンゴム製のグラスも自社開発し、一般消費者向け商品として独自のブランド「KINJO JAPAN」で展開中です。これらの活動は、社員にとっても仕事の価値や、仕事の意義を再認識する機会になっています。そのほか、近畿大学のインターンシップ学生に社内報「錦城日誌」を作ってもらっています。これは学生目線で社内を取材してもらって、他部門の仕事内容や社員の活躍ぶりなどを紹介してもらうことで、社内の人に社内のことを知ってもらうことを目的にしています。一方、転職や離職をされる方の多くは、最終的に“賃金”のことを口に出しますが、私は社員に「必要とされている存在価値」や「やっている仕事の目的」などを感じることができる職場環境を作ることで、転職や離職の増加は防止できると考えています。

――最後に御社が求める人物像は?

 

太田社長

ファクトリズムやシリコーンゴム製グラスに携わっている社員は全体の1割程度ですが、メンバーは「会社を変えたい!」、「1人でも多くの人に会社を知ってもらいたい!」、「正々堂々と自慢できる自社製品を持ちたい!」など、熱い思いを持った社員ばかりです。特にシリコーンゴム製グラスは、会社の伝統と歴史、そして技術力を結集した自信作です。そういったことを考えると、個人的にはバイタリティーのある人や、チャレンジ精神旺盛な人を採用したいと思いますが、既存事業においては求める人物像が異なります。社名を見てもわかるように老舗のイメージが強く、現場では高度な品質や安定供給が求められる。そういったことを考えると真面目でコツコツ型の人が活躍できる部分があります。しかし、このギャップは、経営者としてむしろ楽しいところでもあります。

 

【取材・文/写真、饒波(のなみ)正紀】

 

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