――会社の概要について教えてください。
ドリルねじ、特殊ねじのほか、建築部材・工業部材・繊維部材など樹脂射出成形加工品の製造販売を行っています。もともと大阪府内で事業を展開してきましたが、2009年に奈良県橿原市内に移転し、現在に至っています。一方、人材確保の面ですが、今春は非常にうまく行きました。大手の転職サイトを利用したわけですが、地元で働きたいという新卒の男子大学生3名を採用することができました。また、ハローワークを通して1名の男子学生を獲得することができました。退職者の発生で、欠員の補充になったわけですが、本当に人の動きが流動的になっています。ねじ業界においても人の出入りが激しい企業と、そうでない企業の2極化が進んでいるように思います。
――これまでの採用活動や今回、新卒を確保できた理由は?
地元工業高校からのインターンシップ生受け入れ、父兄を対象にした工場見学会などを繰り返し実施していましたが、学生の大手志向が強まり、学生が集まらなくなりました。3、4年前からは指定高制をやめ、普通科高校にも対象を広げてインターンシップ生の受け入れを行っていましたが、それもつかの間でした。毎年、新卒採用を行っているわけではありませんが、ここ2年ぐらい応募はゼロの状態でした。ハローワークでも厳しい状況が続きました。そして一昨年ぐらいから、まずは準大手の転職サイトを使ってみましたが、反応が良くありませんでした。そこで今度は大手転職サイトを活用したところ、4名が面接に来て、そのうち3名の入社が決定。製造と営業部門に人を配属することができました。
採用に成功したのは大手転職サイトの担当者が、ハローワークに提出していた当社の求人票を見ていたようで、2つの点を改善するよう求めてきました。一つは初任給のアップ、そしてもう一つは土日休みの週休2日制。人材確保は喫緊の課題だったため、年間休日も増やすなど思い切って雇用条件を見直しました。そういった中、ラッキーなことにハローワークからも応募があり、40歳前後の業界経験者2名の採用が決定しました。
――現在、社員教育などで工夫している点は?
コロナ禍の時は研修もこまめに実施していましたが、現在は余裕がなくてできていない状況です。また、若い人に対しては3年から5年かけて色々なことを経験させたいと思っていますが、なかなか難しい状況です。人材育成は品質を確保する観点からも重要不可欠だと考えています。特にねじ加工においては個人の力量やノウハウが問われますから、タイミングをみて再開したいと思います。
――最後に、外国人技能実習生の受け入れは?
確かに中小製造業の間で技能実習生の受け入れが増えていると聞いていますが、現在、当社において受け入れはゼロです。珍しいかもしれません。しかし将来的には、製品の選別や包装など軽作業の領域で受け入れを考えなければならない時期が来るかもしれない。人の流動化はまだまだ続くと考えています。それに伴って技能実習生の受け入れや、機械化・合理化などの話が出てくるわけですが、中小製造業においては限界があると考えています。
【取材・文/写真、饒波(のなみ)正紀】