――SNSでの情報発信や知人からの紹介などで求人活動をされています。
インターンの学生を積極的に受け入れていますが、新しいことをやっている会社なので、新卒者にこだわる必要はないと思っています。機械設計、電気設計、ソフトウェアエンジニアの分野で経験者を求めていますが、なかなか獲得が難しい状況です。工作機械業界ではメーカーのある地域に人材が集中しています。東京には工作機械メーカーがないので、求人をかけても人は来ない。一方、スタートアップ企業は人材確保に苦労していると言われていますが、意外といい人材を確保しています。人の出入りがオープンなんですよね。製造業の分野では「社員は家族」というような囲い込みみたいな傾向もあるようで・・・。否定をするつもりはありませんが、私の文化との違いを感じています。
――23歳男性の採用が決まったとお聞きしました。
私のツイッターの「募集してますよ」というつぶやきを見て応募してきました。服飾系の専門学校の出身で、ある企業に専門職で入社したそうですが、「勉強っていうような要素がなく、誰にでもできる労働?作業をこなすだけのような職場環境だった」と語っていました。また、その一方で「新しいことでスタートしたい。技術を身につけたい」という希望を持っていました。大型3Dプリンターに興味を持っていたようで、人柄も良かった。彼を面接した技術マネージャーの評価も高かったので、フィールドエンジニアとして採用することを決めました。今は1対1で教育指導を受けています。とにかく学んでもらって、戦力なってもらいたいと思っています。社員は数名ですが、社内には大手自動車メーカーからの出向社員、他社からの長期研修社員、業務委託先からの社員もいるので、いい意味で多様性があって、組織的にも面白いなと思っています。
――豊富な職務経験をお持ちです。部下との関係構築や組織運営で気にかけていることは?
若い頃は、相手を引きずり落としてでも上に上がっていくという競争社会だった。私も過去には部下から怖がられていた時期もありました。しかし、さまざまな実業家や経営者などとの出会いで考え方が大きく変わりました。上司と部下の関係や働き方についても。そして今はチームワークの大切さをひしひしと感じています。最近の若い人は色んな形でコミュニケーションできるし、上手だなと思います。そのコミュニケーション力は評価できるし、興味を持っています。彼らは、バブル時代のようないい思いもありませんし、日本がすごい時代だった頃も経験していないので、価値観についても共感できます。
――社員の副業を認めていますが、その理由は?
ある会社に勤めていた時の話ですが、新規事業を立ち上げる話がありました。そこで私は「社員の副業をOKにすべきだ」という話を社長に提言させていただきました。新規事業をやるには広い視野が必要だと考えています。視野を広げることで自社を客観的に見れるようになりますし、自社の良さや強さを認識することができます。転職の防止にもつながります。現在、その会社では実際に副業をしている社員もいるようですが、そういう形の文化がないと、転職もそうですが、採用が偏ったりとか、新しい人材がうまく流入してくる仕組みが作れないと思います。
【取材・文/写真、饒波(のなみ)正紀】